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日本政府「奨学金も課税対象に検討しちゃおっかな~♪」待て待て!それはアカンやつだ!

2023年7月19日、夕刊フジが「奨学金に課税か?」と報じ、ネットニュースが大きくざわつきました。

奨学金は貧しい世帯の子供でも教育を受ける為に貸与、または給付される奨学金で、非課税扱いされています。

このニュースが報じられる数日前には「2023年度の日本は過去最高の税収」というニュースもありました。

 

そんな状況の中、なぜセーフティネットと言われる奨学金に課税をするのか?

今回は奨学金に課税する報道について、フォーカスを当てていきたいと思います。

1.事の発端は夕刊フジが報じた記事

「奨学金が課税の対象になるかも」これが報じられたのは、2023年7月19日に夕刊フジが掲載した記事になります。

答申では「非課税所得」についても、「他の所得との公平性や中立性の観点から妥当であるかについて、

政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要がある」としている。

参考例として通勤手当や社宅の貸与などが挙げられていることはすでに紹介したが、

ほかにも少額投資への非課税を売りにしたNISAの譲渡益や配当、

失業等給付、遺族基礎年金や、給付型奨学金も含まれている

引用元:岸田政権「サラリーマン増税」底なし…奨学金・遺族年金・失業等給付もリストアップ 「アベノミクス以前に逆戻り」専門家警鐘(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース

これがYahoo!ポータルに掲載された結果、大きな反響を呼ぶことになりました。

 

しかし夕刊フジは過激な見出しや憶測で記事を書く=飛ばしにも定評のあるメディアです。

果たして本当に奨学金に課税を検討しているのか?調べてみました。

1-1.『第27回 税制調査会(2023年6月30日)資料一覧』に問題の箇所を発見

夕刊フジがソース元としている資料『第27回 税制調査会(2023年6月30日)資料一覧』はネット上にも公開されています。

そしてその資料を見ると、102P~103Pに問題となった部分がありました。

 

(3)非課税所得等
先述のとおり、個人所得課税の課税対象となる「所得金額」は

包括的に捉えることが原則ですが、

例えば、給与所得者に支給される旅費などの実費弁償としての性格を有するものや、

一定の社会保障給付など生活保障的性格を有するもののように、

その性質や政策的要請により非課税や免税とされて、課税対象から除かれている所得が存在します。

これらの非課税所得等については、それぞれ制度の設けられた趣旨がありますが、

本来、所得は漏れなく、包括的に捉えられるべきであることを踏まえ、

経済社会の構造変化の中で非課税等とされる意義が薄れてきていると

見られるものがある場合には、そのあり方について検討を加えることが必要です。

特に、政策的要請により非課税等とされている制度については、長寿命化により、

そうした所得がこれまで以上に蓄積していく可能性等に鑑みれば、

他の所得との公平性や中立性の観点から妥当であるかについて、

政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要があります。

また、所得には、金銭による収入のみならず、現物給付、すなわち物や権利

その他の経済的利益による収入も含まれますが、被用者に対する社宅の貸与、

食事の支給、従業員割引など、一定の条件を満たす少額の現物給与など

一定のものについては、税務執行上追求しないなどの趣旨から課税しない取

扱いがされています。

引用元:税制調査会 第27回 資料1 P102~103 (非課税所得等)より

 

長々と小難しく書いてあるので4行で要約しましょう!

  • 本来、所得税の課税対象となる【所得金額】は、原則全て課税対象だ
  • だが社会保障や生活保障の意味合いがある【所得金額】は、非課税や免税だ
  • 変化し続ける社会の中、非課税や免税にするのが正しいか検討すべきである
  • 非課税の意義が薄れている【所得金額】があれば、有り方について見直すべきだ

 

正直、言っている事は分からなくもありません。一理あります。

え?じゃあこれって正しいと思うのかって?HAHAHA!

 

 

ダメに決まっているでしょ!

1-2.主な非課税所得に奨学金が挙げられたのが発端

先の引用元の先に主な非課税所得が挙げられています。

そこに奨学金が入っていたのが報道された結果、議論を呼ぶことになりました。

<参考:主な非課税所得>

・ 給与所得者の旅費や職務の性質上欠くことのできない現物給付などの実費弁償的
性格に基づくもの

・ 通勤手当(1ヵ月当たりの合理的な運賃等の額(上限 15 万円))のように、

住宅事情等からみた場合にその全額を課税対象とすることは

妥当でないとの政策的配慮に基づくもの
・ 雇用保険上の失業等給付、生活保護給付、遺族基礎年金、遺族厚生年金

(遺族自身の厚生年金がある場合は、遺族厚生年金がそれを上回る部分のみ)、

給付型奨学金などの社会政策的配慮に基づくもの

・ NISA口座内における上場株式等の譲渡益や配当等のように

特定の政策目的のための措置として講じられるもの
・ 家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産

(貴金属や宝石、書画、骨とうなどは、1個又は1組の価額が 30 万円以下のもの)

に係る譲渡所得などの担税力の考慮に基づくもの

・ 当座預金の利子など少額不追求の見地によるもの

引用元:税制調査会 第27回 資料1 P103 (非課税所得等)より

 

あくまで「非課税や免税になっている制度は、意義が薄いなら見直すべき」と提言されただけ。

そして2023年時点で非課税になっている所得に奨学金が挙げられただけ…とみる事もできます。

実際、奨学金に課税するかは全く決まっていません。

 

しかし見方を変えれば『奨学金含む非課税所得は課税対象に検討すべきだと、ロックオンされている』ともみられます。

どちらが正しいか…私は後者だと思います。

 

何故ならこの資料を作ったのは、首相の諮問機関である政府税制調査会だからです。

一介の機関がマスメディアに寄稿する資料ではありません。

首相が直接目を通す資料に書く=重要性が高く、検討すべきだと提言しているのと同等だからです。

 

仮にそういう意図が無くても、非課税所得を見直すか検討すべきと書いた後に

非課税所得一覧なんて書かれたら「非課税所得が課税されるかも…!」って思いますよ。

2.貧乏世帯の学歴格差は防ぐ!でも奨学金に課税するって矛盾してる…

(教育と格差の固定化)

平成2(1990)年時点では3~4割だった大学(4年制大学・短期大学)進学率は、

令和3(2021)年には約6割まで上昇しており、

高学歴化が進行しています。この傾向自体は、勉学への意欲の向上として望ましいことです

が、高校卒業後の予定進路には親の年収が大きく影響していることが知られ、

世帯年収が 400 万円未満の場合には4年制大学に進学する割合は

3割程度まで減少します。

そして、最終学歴がその後の生涯賃金に大きく影響することも統計上明らかであり、

大学・大学院卒男性(約 2.7 億円)と高校卒男性(約 2.1 億円)で比べると、

約 6,000 万円の差があるとされています。

また、高等教育進学への障壁には、上述の世帯年収だけでなく、

家庭の社会経済的背景を示す指標であるSES

(Socio-Economic Status; 家庭所得、父親学歴、母親学歴の三つの変数を合成した指標)

が大きく影響しているという研究もあります。こうした研究結果等を見ると、

学歴格差は、世帯年収等を通じて親世代から子ども世代、孫世代まで

連鎖的に引き継がれていく可能性があり、教育問題というよりも社会問題と捉え、

その連鎖を食い止める方策が求められます。このような学歴格差の問題には、

特に不利益の大きな生徒に個別に対応する対症療法と、そもそもの不利益層が生じないようにする

構造対応の双方による機会の公平の確保が求められます。

引用元:税制調査会 第27回 資料1 P61 (教育と格差の固定化)より

 

今回の記事を書いてて、私が一番モヤっとしたのがここ。

税制調査会の資料では「世帯の貧富による学歴格差は防がないといけない」と明記しています。

一方で、同じ資料内で『非課税の意義が薄いなら見直すべき』と書き、非課税所得として奨学金を挙げています。どっちなんですかね。

 

奨学金は日本国憲法第26条第1項の

「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて等しく教育を受ける権利を有する」=『教育の機会均等』

という理念の元、実施されていると日本学生支援機構も書いているのです。

 

参照元:日本学生支援機構 奨学金事業への理解を深めていただくために P4

 

奨学金は貧しい世帯でも均等に教育を受けさせる為の制度と国の機関だと、ハッキリしています。

なのに何故?貧しい世帯の救済措置である奨学金に課税するのか?

私には意味が分かりません。

3.奨学金以外の非課税対象も見直すべきじゃないものばかり

税制調査会の資料では、非課税所得として奨学金以外にも挙げている点も危機感を覚えます。

  • サラリーマン(給与所得者)の旅費や職務上欠かせない現物給付
  • 通勤手当
  • 雇用保険で受け取れる失業給付(雇用保険)
  • 生活保護
  • 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金
  • NISA口座内の譲渡益や配当
  • 生活に必要な動産
  • 当座預金の利子

これも非課税所得として挙げられた訳ですが…、どれもこれも課税対象にするのはアカンモノばかりです。

 

特に生活保護や遺族年金はセーフティネットの中でも最終手段、そこに追い打ちをかける課税は断じてNOです。

雇用保険に課税は再就職後の生活を圧迫する要因になります。

サラリーマンの旅費(出張費)や通勤手当も課税対象にすれば、その分の手取りは減ります。

 

NISAは毎年一定金額の範囲内の金融商品の利益にかかる税金がゼロなのが最大の売り。

そのメリットを無くすって「もうNISAじゃなくても良くね?」ってなりそうなんですがそれは…。

2024年から始まる新NISAは非課税の保有期間や保有限度額が上昇しています。

よってNISAが課税対象になるのは、ありえないとは思いますが…。

4.ネットでの反応は岸田政権への非難ばかり…

夕刊フジの記事が出た所、ネット界隈では非難轟々です。

 

 

 

夕刊フジの記事が政権批判寄りだったので、プラスに捉えるTweetは見つからず。

元々、岸田政権は増税のマイナスイメージが付きまとっている印象でしたが

ただでさえマイナンバー問題で支持率が40%を下回る状況なのに、更に支持率下がりそうですね…。

5.奨学金が所得税の課税対象になるとどうなるのか?

奨学金が所得税の課税対象になった場合、奨学金受給中の学生の生活を圧迫する可能性は高くなります。

また独自の奨学金を打ち出し、卒業後に奨学金の返済を支援する非課税所得の支援金が課税対象になる事も考えられます。

いずれにせよ、奨学金が課税対象になると奨学生には大きな壁になりそうです。

5-1.奨学金返済に充てる非課税の支援金が課税になる可能性あり

奨学金にはJASSOが貸与するものの他、特定の団体や企業、財団が貸与している奨学金が存在します。

この奨学金の中には、卒業後に一定期間を特定の企業で働くなど特定の条件を満たすことで

奨学金の返済を支援する「学資に充てる為の金品(非課税所得)」を給付する制度があります。

 

奨学金が課税対象になると、奨学金の返済を支援する金品も、課税対象になる可能性は否めません。

奨学金に課税されなくとも、他の非課税所得が課税対象になるパターンも考えられます。

参考元:奨学金の返済に充てるための給付は「学資に充てるため給付される金品」に該当するか|国税庁

5-2.第2種奨学金の場合は12万円/月だと年72,000円の所得税がかかる…

仮に第2種奨学金が所得税になった場合、月12万円貸与されていると年72,000円の所得税が発生します。

 

12万円×12(ヶ月)=1,440,000円(奨学金の1年間の貸与額)

1,440,000円×5%(所得税の税率)-0円(控除額)=72,000円/1年辺りの所得税

参照元:No.2260 所得税の税率|国税庁

 

これはキツい…。

アルバイト等をしている場合、アルバイト先の所得税も上乗せされてしまいます。

しかも在学中でコレですよ…。

 

所得税は大体年収103万円未満ならかかりません。

しかし奨学金が所得税対象になると、簡単に103万円は超えるでしょう。

 

…いや冗談抜きで学生さん生活できないって!

非課税所得の見直しには断固としてNO!

セーフティネットに課税をかけるのは悪手です。

「貧民は死ね」「金のない子供は勉強するな」「少ない手取りが手当に税金がかかって更に減る」

こんな事を言っているのも同然です。

いくら社会の意義が薄いだの言われても、社会保障の面を持つ非課税所得を課税するのは断固としてNOです。