奨学金の返済が苦しい…そんな時の一時しのぎ
2023年6月18日、朝日新聞が『自殺の動機に奨学金の返済苦』という
なかなかショッキングな記事を取り上げた。
本来、経済的に進学を望めない学生に融資を行い
将来の選択肢を広げる奨学金、それが大人になってから苦しむという皮肉。
今回の記事では日本学生支援機構(以下JASSO)の
奨学金を猶予、毎月の返済額を減らす申請について語っていきたい。
無職じゃなくても、奨学金の返済が苦しい人には参考にしてもらうと嬉しい。
今回のまとめ
年収300万以下なら奨学金の猶予・減額を申込む
JASSOでは猶予・減額の基準を公表済み
マイナンバー提出後は条件次第でネットから申込み可能
生活が苦しい時は迷わず相談・申込みがおすすめ
■JASSOの奨学金返済が苦しい時、取れる手は3つ
「奨学金の返済がどうしても苦しい…」この時、返済者が取れる手は3つある。
- 1年間の返還期限猶予を申請
- 月々の返還する金額を減らす減額返還を申請
- 自己破産(ただし最終手段)
JASSOでは、返済が苦しい時には1と2の猶予申請か減額返還を行うよう通達している。
また猶予・減額申請共に審査基準を明記している。
民間のローンと違って返済を待ってもらいやすいのが特徴だ。
まずはこれらの手を駆使して、奨学金返済の負担を減らすのがベターと言える。
今回の記事では3の自己破産は割愛する。
■■返還を止める返還期限猶予・金額を減らして払い続ける減額返還
返還期限猶予と減額返還を比較すると下記表のようになる。
申込先 | 返還期限猶予 | 減額返還 |
---|---|---|
特徴 | 1年間の返還停止 |
返還金額を2分の1 または3分の1に減額 |
審査基準(給与所得者の場合) |
年間収入金額が 300万円以下 |
年間収入金額が 325万円以下 |
審査基準(給与所得以外に収入有) |
年間所得金額が 200万円以下 |
年間所得金額が 225万円以下 |
申込みは必要な書類を揃えて郵送が基本。
しかし最近は条件を満たせばスカラネット・パーソナルでネットから申込みも可能だ。
どちらを選ぶかは自分の収入状況を基に、奨学金相談センターに相談するのがおすすめ。
0570-666-301
9:00~20:00 月曜~金曜日(祝日年末年始は除く)
■手段1:最長1年間待ってもらえる返還期限猶予
奨学金返還で苦しい時、一番ポピュラーなのが最長1年間返還を待ってもらう返還期限猶予だ。
返還期限猶予の特徴
- 申請して最長1年間返還がストップ
- 1年後再度申込めば最大10年間待ってもらえる
- 返済を先送りして生活を立て直すのが目的
- 経済困難の人は年収300万円以下が対象
- 条件を満たせばネット上からでも申請できる
- 申込みにはマイナンバーの提出が必須
返還期限猶予の適用中は、奨学金の返還が行われることはない。
結果、奨学金の返済に充てていたお金の負担が無くなるのが最大のメリットと言える。
あくまで返済を待ってもらうのであり、返済期限の先送りなのだが
民間のローンと異なり、猶予期間中は利息含め返済総額が変わらないのもポイントだ。
■■返還期限猶予は奨学金の種類によって2種類ある
JASSOの返還期限猶予を申請する場合、申請先は一般猶予か否かで分かれている。
一般猶予は第一種奨学金、または第二種奨学金の貸与を受けた人が対象。
もう1つは、猶予年限特例(平成29年度以降採用者)又は所得連動返還型無利子奨学金(平成24~28年度採用者)だ。
JASSOの奨学金は主に無利子の第一種、有利子の第二種がほとんどなので
一般猶予で申請するのが主流だろう。
〇猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金…って何?
『猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金』とは、以下の特徴がある。
- 家計状況が苦しい学生が前提条件
- 第一種奨学金(大学院を除く)の貸与を受けた学生が対象
- 本人が一定の収入を得るまで返還期限猶予を受けられる
- 一般猶予と異なり10年の期限が無い
- 家計支持者の所得金額(父母共働きの場合は父母合算)が所定の金額未満
一見すると、無利子の第一種奨学金の貸与を受けられる優秀な学生向けだが
ただの第一種奨学金とは違い、以下の条件のいずれかに当てはまる必要がある。
- 乳幼児がいる世帯で対象となっている被扶養者以外に保育する者がいない。
- 介護等を要する障害者、療養者又は要介護者がいる世帯で対象となっている被扶養者以外に介護等を行う者がいない。
- 対象となっている被扶養者が妊娠中である。
- 対象となっている被扶養者が身体の障害その他やむを得ない事由により就労が制限されている。
第一種奨学金を受けられる優秀な学生だが、様々な不利を被っている人を救済する
特例中の特例な奨学金…という訳だ。
■■一般猶予で申込める事由
返還期限猶予の一般猶予の場合、以下に該当する人が対象となる。
恐らく多くの人が当てはまるのが、経済困難か失業中になるだろう。
この記事では経済困難と失業中にスポットライトを当てていく。
それ以外の事由については、下記リンク先を参照してほしい。
■■失業中で一般猶予を申請する条件
一般猶予の失業中は下記前提条件を満たしている必要がある。
- 失業後6ヶ月以内でアルバイト含む再就職が出来ていない状態
- 失業前から延滞していない
- 後述する失業に関する書類を持っている
経済困難で申請する場合と違い、失業中であるか否かが重要。
ただし離職日から6ヶ月以上経過している場合は、失業中ではなく経済困難で申込む必要がある。
〇失業中で申請するのに必要な書類
申込みの際には所定の『猶予願』『チェックシート』『マイナンバー提出書』と共に
以下の失業に関する書類のいずれかを郵送で提出する流れだ。
※1.2.3.の書類はマイナンバーを提出することで省略可能
※1.を提出する場合求職活動記録面のコピーはマイナンバー提出でも省略不可
猶予願とチェックシート、マイナンバー提出書は郵送で送ってもらうことも可能だが
原本をpdfでダウンロードして自宅やコンビニ等で印刷して記入、送付する方が
手っ取り早く申請できるのでおすすめ。
猶予願とチェックシートのpdf
↑ チェックシートに提出先の郵便番号と宛名の記載あり!
マイナンバー提出書のpdf
何らかの事情で1.2.3.4.の書類を提出できない場合は、次のいずれかの書類を提出する。
その際1.2.3.4.の書類が取得できない理由を、特記事項欄(別紙可)に記入する必要あり。
- 雇用関係終了を確認できるもののコピー(退職証明書など)
- 健康保険厚生年金保険資格取得(喪失)証明書のコピー(退職の記載があるもの)
言うまでも無いが、提出する書類は全てコピーという点に気を付けよう。
特に雇用保険受給資格者証は、雇用保険の給付に必須なので絶対に原本を提出してはいけない。
■■経済困難で一般猶予を申請する条件
経済困難が理由で一般猶予とは、下記の特徴がある。
- 2021年(令和3年)11月以前に卒業・退学した人が対象 ※1
- 無職・未就職・定収入により返済が困難
- 収入が一定の基準未満
- 他の事由と通算して10年が猶予の限度
※1 2021年(令和3年)12月以後に卒業または退学の場合は「新卒等」で申請
恐らく最も多くの人が申請するのがコレ。
そして経済困難の場合、下記の基準を満たしているか否かが最重要。
申込者の状態 | 審査基準 |
---|---|
給与所得者 | 年間収入金額(税込み)で300万円以下 |
給与所得以外の 所得を含む場合 |
年間所得金額(必要経費などの控除後)が 200万円以下 |
金額は目安ではあり、基準を満たしている場合でも追加の書類を求める場合もあったり
引き続き返還を求める場合もあるらしい。
しかし、ここまでバッチリ基準を公表している以上、悪質なパターンでなければ条件を満たせばほぼOKな感じもするが…。
少なくとも私は聞いた覚えが無い。
〇経済困難で一般猶予を申請する必要書類と収入の確認方法
経済困難で申請する場合、まず下記3つの内、いずれかの書類が必要だ。
- 所得証明書
- 市県民税(所得・課税)証明書 ※1
- 住民税非課税証明書
※1 収入金額または所得金額が明記されているもので課税額のみは不可
※どの書類でも前年度分、2023年(令和5年)に申請するなら2022年(令和4年)の書類が対象
※1.2.3.の書類はマイナンバーを提出することで省略可能
この3つの書類に記入されている金額で、経済困難の一般自由を申請する。
そして300万円(あるいは200万円)の審査対象だが、所得証明書の場合
給与所得者の場合、『給与収入』(自治体によっては給与支払額)が審査対象だ。
給与収入が300万円以下なのを確認した後の流れは下記の通り
- 上記リンクの『猶予願』『チェックシート』『マイナンバー提出書』の入手と記入
- 記入した書類全てと、入手した1.2.3.のいずれかを封筒に同封 ※1
- JASSOに送付して完了
※1 マイナンバーを提出する場合、証明書の提出は省略可能
〇マイナンバー提出後はネットから猶予申請できる!
一度JASSOにマイナンバー提出しておくと、下記の条件に当てはまる人は
インターネット(スカラネット・パーソナル)から猶予申請が出来るのでオススメだ。
手順もJASSOの方で公表しており、下記の流れになる。
- スカラネット・パーソナルにログインする
- 「各種手続」タブを選択
- ワンタイムパスワードを取得
- 「各種手続」にログインし、「7.返還期限猶予願」の「次へ」を押す
- 「奨学金返還期限猶予 誓約」で奨学生番号と氏名を確認して「送信」を押す
- 「奨学金返還期限猶予 同意確認」で同意事項を確認の上、すべてチェックして「送信」を押す
- 「インターネット提出可否判定」で奨学生番号毎にインターネット提出の可否が表示されるので、「インターネット提出」を選択する。「願出事由」を選択して「次へ」を押す
- 「奨学金返還期限猶予 内容入力」で返還期限猶予の期間・願出事由を確認して「送信」を押す
- 「受付完了画面」が表示
申込みの条件が弾かれてしまう場合は7.で判定される。
ネット申込みがダメだったら、あきらめず郵送で申込もう。
ネット申込みの審査結果は、2週間後にスカラネット・パーソナルの『内容詳細画面』に表示される。
願出は猶予開始希望月の3ヶ月前から出来るので、早めにやっておくのがオススメだ。
■手段2:毎月の負担を最大3分の1まで減らせる減額返還
毎月の返済額を2分の1、または3分の1に返還金額を減らしながら返済を続けるのが減額返還だ。
減額返還の概要
- 毎月の返還額を2分の1、または3分の1に減らす
- 2分の1にするか、3分の1にするかは選べる
- 猶予申請と異なり審査基準は更に緩い
- 申込みにはマイナンバーの提出が必須
- 減額返還中に2回続けて振替不能となった場合ペナルティ有
- 条件を満たせばスカラネットパーソナルから申込み可能
あくまで毎月の返済額を減らすだけであり、総額は変わらない点は猶予申請と同じ。
しかし返済を続ける余裕はある人向けなので、減額返還は猶予申請と比較すると審査基準は更に緩い。
MAX3分の1、つまり毎月の負担を66%カット出来るので猶予申請がダメだった人は減額返還を試すのもアリ。
■■減額返還の条件と審査基準
減額返還を申込む場合、下記条件を満たすのが必須となっている。
上記の条件全てを満たしたうえで、下記収入・所得の審査をパスするのが必要だ。
申込者の状態 | 審査基準 |
---|---|
給与所得者 | 年間収入金額(税込み)で325万円以下 |
給与所得以外の 所得を含む場合 |
年間所得金額(必要経費などの控除後)が 225万円以下 |
返還期限猶予と異なり、収入・所得金額がプラス25万円増えたのが特徴だ。
ここまで増えると、減額返還を申込むハードルはグンと低くなるはず。
生活が苦しい…と感じたら無理をせず、申込んだ方が良い。
■■減額返還の対象事由
減額返還を申込めるのは、下記事由に該当する人になる。
- 経済困難
- 失業中
- 新卒等
- 災害
- 傷病
- 特別研究員
- 海外居住
- 外国で研究中
- 今年海外から帰国
猶予の時と異なり減額返還に『失業中』は無い。
ここからは経済困難を基に流れを見ていこう。
その他の事由は下記リンク先を参照してほしい。
〇経済困難で減額返還を申込む流れと必須書類
経済困難で減額返還を申込む流れは、返還猶予の時と似たような流れになる。
減額返還願いとチェックリストのpdf
↑ チェックリストに送付先の郵便番号と宛名あり
マイナンバー提出書のpdf
マイナンバーを既に提出済みの場合、スカラネットパーソナルから申込むことも可能。
■■減額返還中に2回続けて振替不能はアウト!
減額返還中に2回続けて振替不能になると下記ペナルティが発生する。
- 延滞発生時にさかのぼって減額返還の適用取り消し
- 延滞金の発生
延滞金の発生はもちろん痛いが、減額返還の適用取り消しは更にキツイ。
減額返還適用中は、必ず引き落としが出来るよう口座にお金を入れておこう。
■奨学金返済に困ったら、まずJASSOに相談しよう
最後に、奨学金の返済を負担に感じる人に一言。
実は奨学金の返済が苦しいと感じる人は、決して少なくないのだ。
日本の奨学金は実質、教育ローンだという批判もある。
その声を受け、JASSOも猶予・減額のボーダーラインを明らかにしたり
ネットでも猶予・減額の申込み可能と、かなり敷居が下がっている。
なので、奨学金の返済が苦しいと感じたらJASSOに連絡して相談するのが良い。
向こうも将来の為に貸した奨学金で破産という結果は望んでいない。
返還が難しい時の公式リーフレットのpdfリンクも貼っておくので、是非目を通してほしい。
リーフレットのpdfリンク
0570-666-301
営業時間 9:00~20:00
月~金曜日(年末土日祝日は除く)
今回のまとめ
年収300万以下なら奨学金の猶予・減額を申込む
JASSOでは猶予・減額の基準を公表済み
マイナンバー提出後は条件次第でネットから申込み可能
生活が苦しい時は迷わず相談・申込みがおすすめ