退職後は健康保険が必須?保険料の減額は?
日本では『国民皆保険』というシステムを採用している。
その為、日本国民は何らかの健康保険に加入が必須だ。
働いている人は、会社の健康保険に加入するのが一般的。
しかし退職後は会社の健康保険から脱退してしまう。
そこで今回は退職後の健康保険についてどうなるのか?減額についても書いておく。
今回のまとめ
- 退職後、健康保険の切り替えは自分で行う
- 主な加入先は国民健康保険
- 家族の扶養に入るには親等と収入の審査が必要
- 正社員フルタイム退職後に家族の扶養入りは厳しい
- 離職理由によっては国民健康保険料が7割減!?
■退職後は3つのいずれかの保険加入が必須
会社で働いていた場合、会社の社会保険に加入しているが退職後は
下記3つのいずれかの社会保険に加入しなくてはいけない。
繰り返すようだが、日本は国民皆保険だ。
「自分は若く健康なので健康保険加入はいらない」は、気持ちは分かるが通用しない。
また思わぬ事故により急に病院に通わなくてはいけないことも勿論ある。
…まあ諦めて、どれに加入するかさっさと決めた方が身のためだ。
■■退職後は国民健康保険の加入が一般的
退職後の社会保険として一般的なのが国民健康保険、加入の流れは下記の通り。
手続きにかかる時間も混雑していなければ、そこまでかからないだろう。
〇会社の社会保険と国民健康保険の違いは?
会社の社会保険と国民健康保険の最も異なる点は、保険料の折半の有無。
会社の社会保険は、労働者と折半して保険料を払っていくのが特徴。
一方、国民健康保険は自分で全て払う必要がある。
一番キツイのは保険料は前年度の所得金額を基に算出されるので
退職した年は今まで会社が負担してくれていた分も込みで
国民健康保険の保険料を支払わなくてはいけないのだ。
「退職後、健康保険料の納付書の金額に目玉が飛び出た!」なんて聞くのは
大体これのせいである。
■■会社の健康保険・協会けんぽを継続は少ない
会社の健康保険や協会けんぽに加入している人は、退職後に保険を継続する手もある。
ただし継続しても保険料は会社は折半しない、退職しているから当然だが。
毎月納付する健康保険料の金額は、退職時の明細の約2倍が保険料の目安となる。
会社の保険、いわゆる社保は退職後も継続できるかは会社次第。
国民健康保険と異なり減免制度も無いので
会社の健康保険・協会けんぽの継続は、ほとんど無いとみていいだろう。
■■家族の保険に被扶養で健康保険料を抑える手もある
退職後に家族が加入している健康保険の被扶養者となり、健康保険料を抑える手もある。
被扶養者になれば保険料の負担は無く、また家族の健康保険料が増えることもない。
国民健康保険・会社の社保や協会けんぽの継続と比較すると負担がないのが特徴だ。
ただし『退職者と家族との関係』と『退職者の収入』について、審査基準がある。
また家族が加入している健康保険によっては、更に扶養家族の条件を求めることもある。
いずれにせよ、負担が無い分、条件をクリアしなくてはいけない点に気を付けよう。
〇被扶養になる条件1…家族は3等身以内か?
退職者本人と『家族』が3親等以内か?
『家族』と退職者本人が同一世帯か否か?が、まず重要。
これについては協会けんぽが画像で上記公表しているので
実際に見てもらった方が早いだろう。
参照元:
〇被扶養になる条件2…被扶養者の収入
『家族』の扶養に入るには、被扶養者になりたい人の収入も審査基準。
いわゆる130万円の壁というのが、扶養に入れるか否かのボーダーラインだ。
- 被扶養者になりたい人と家族が同一の世帯である
- 被扶養者になりたい人の年間収入が130万円未満である ※1
- 被扶養者の年間収入が、被保険者(家族)の年間収入の2分の1未満である
※1…被扶養者になりたい人が60歳以上
または障がい厚生年金を受けられる程度の障がい者の場合は180万円未満
ちなみに130万円の壁と言われるが、これはあくまで協会けんぽの話。
家族の加入している社会保険によっては、年収によって差が上下することもありえる。
いずれにせよ家族が加入している社会保険に、扶養の手続きをしてもらうため
家族に問い合わせてもらった方が良いだろう。
〇フルタイム正社員勤務の退職後は被扶養は厳しい
「正社員でフルタイム勤務していたけど、退職後は雇用保険をもらいながら
家族の保険に被扶養で加入して、のんびりしたいなあ…」
これが一番理想なのだが、正直厳しい。
なぜなら家族が扶養に入れるか否かの年収の判断方法にあるのだが
申込み後から1年後までの収入を予測するのが多いから。
この収入には雇用保険の給付も勿論カウントされるし、退職金もあれば該当する。
また給付制限がかかっているなら、生活費を稼ぐ為に働くこともあるだろう。
その為、正社員では扶養に入る年間収入の壁に阻まれてしまう可能性は高い。
正社員でフルタイムで働いていたら、退職した年は家族の扶養には入れないと考えておいた方が無難だ。
■退職後に国民健康保険料が軽減される理由と離職理由コード
退職後は国民健康保険の加入が一般的だが、退職した理由によっては保険料が一部軽減される。
まず前提条件として離職時の年齢が65歳未満であること。
そして離職票・雇用保険受給資格者証に下記離職理由コードが記載されていることだ。
離職理由コード | 離職理由 |
---|---|
1A(11) | 解雇(離職理由コード50の重責解雇は除く) |
1B(12) | 解雇(やむをえない事情により事業の継続が不可能) |
2A(21) | 特定雇い止めによる離職(雇用期間3年以上且つ雇い止め通知あり) |
2B(22) | 特定雇い止めによる離職(雇用期間3年未満・更新明示あり) |
2C(23) | 特定の理由による契約期間満了(雇用期間3年未満・更新明示無し) |
3A(31) | 事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職・退職勧奨 |
3B(32) | 会社・事業所等の移転等、正当な理由による自己都合退職 |
3C(33) | 正当な理由のある自己都合退職(被保険者期間が12ヶ月以上) |
3D(34) | 正当な理由のある自己都合退職(被保険者期間が6ヶ月以上12ヶ月未満) |
※離職理由コードのカッコ外は離職票に記載、カッコ内は雇用保険受給資格者証に記載
これらのコードが記載されているのは、雇い止めや倒産、
あるいは何らかの障がい等で退職せざるをえなかった人だ。
つまり特定受給資格者、または特定理由離職者に該当する。
自分の意思で退職していない人は、会社の保険からほっぽり出されてしまう。
そういった人達を救済する意味で、国民健康保険では救済措置が用意されている訳だ。
■■減額後の保険料は7割引き!?
減額後の国民健康保険料は、住んでいる地区にもよるが7割近く減ることもある。
あくまでの目安だが、新宿区の令和3年度国民健康保険料概算早見表(給与・年金)で見てみよう。
新宿区在住単身サラリーマンのAさん30歳、給与収入は前年度500万円だった。
特定理由離職者となり退職後、国民健康保険に加入して30%された場合。
給与収入500万円時、1ヶ月あたりの保険料は29,217円(介護分無し)だが
500万円を30%に減算すると150万円、月々の保険料は8,467円になる。
差額にしておおよそ2万円弱が毎月浮くことになる…これはデカい。
しかも軽減期間は離職日の翌日から翌年度末までと長いうえ
更に軽減期間中は、再就職等で国民健康保険の資格喪失まで適用される。
国民健康保険料の減額は各自で在住の行政に届け出る必要がある。
申込んで損は無いので、対象者は必ず申込んでおきたい。
参照元:
令和3年度 国民健康保険料 概算早見表(給与・年金)
https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000308663.pdf
■退職後は健康保険を必ず切り替えよう
最後に退職後に健康保険の切り替え、国民健康保険料の減額は、全て退職者が行う必要がある。
国民皆保険というシステム上、健康保険に加入していないと罰せられる人もいるようだ。
仕事を辞めてウキウキになる気持ちは分かるが、ちゃんと健康保険の切り替えやお得な減額はやっておこう。
今回のまとめ